【2024年度入学】京都大学大学院 情報学研究科 社会情報学コースに社会人から合格しました

2023年8月に実施された京都大学大学院 情報学研究科 社会情報学コースの院試に合格しました(2024年4月入学)。私は現在社会人のため、働きながらの受験チャレンジとなりました。

院試の内容、勉強法、社会人・外部生が大学院を受験する際の戦略について少しでもお伝えできればと思います。

入試までにやっていたこと、入試のときの雰囲気、それぞれの教科の勉強法などを書いていきます。

※これから院試を受ける人にとって最大限有益な情報になればと思っていますので、質問等あれば可能な限りお答えしたいですが、資料や解答をお渡しするなどの個別の対応はできかねます

※記事が長くなったので各教科の勉強の記事は別記事にしました。以下の記事になります。

試験概要

社会情報学コースの入試内容は英語、筆記試験(基礎科目・専門科目)、面接の3つです。

英語

英語はTOEFL, TOEIC, IELTSの試験を事前に受け、その点数を提出する形でした。

基本的にTOEICが一番難易度が低いと思います。院試の日から2年前までの成績なら有効のようです。

院試の出願までに出た最高点を提出すればいいので、ここでできるだけいい点を取っておくことが重要になります。

TOEICでいえば800点程度取っておけば不利になることはないと言われているようです。とはいえ複数回チャレンジできるので可能な限り高得点を取っておくことが望ましいのかと思います。

基礎科目

筆記試験は情報学基礎と専門科目の2つからなります。

情報学基礎は「入門 コンピュータ科学」という参考書からの出題になります。

情報学の基礎的な内容を網羅した書籍になります。この書籍は完全理解を目指すのがよいです。

過去問をみている感じだと、近年はこの本の内容の問題、というよりこの本の内容を用いた初見の問題が出てくる傾向にあるようです。

ですのでちゃんとした知識としてこの本の内容を身に着けることが重要になるかと思います。

専門科目

専門科目は第一志望の研究室の分野によって解答する内容が異なります。

私が志望した研究室は計算機科学分野でした。

計算機科学分野は、人工知能・データベース・情報システム・計算機ソフトウェア・情報ネットワーク・データ構造・アルゴリズム・パターン認識・情報教育・ヒューマンインタフェースが出題範囲になります。

とても範囲が広いですが、、例年この問題が出るという傾向は一応ありますので対策はなんとか可能です。

面接

願書と一緒に提出する志望説明書にもとづいておこなわれるようです。志望説明書はA4サイズの用紙2枚以内で様式自由とのことです。

私の場合はすでに社会人だったので、大学生時代にやっていた研究の内容と、社会人からどうしてわざわざ大学院生になって研究をしたいと思うようになったのかを熱意たっぷりに書きました。

院試までの流れ

試験日までにどのようなことをしたかの流れをここに書きます

試験1年前

このくらいから大学院での学びなおしがしたいという意識がありました。このときは東大、京大、阪大など自分のやりたいことにマッチしそうな研究室を探していました。

東大、京大、阪大でそれぞれでひとつ研究室の目星をつけており、それぞれの研究室の院試についての情報を収集していました。

試験10か月前

当時は割と阪大の研究室に行きたいなという気持ちだったので、阪大の院試の範囲の参考書の勉強(情報理論、ネットワーク工学、古典・現代制御、人工知能)をしていました。

とはいえ、まだ確定ではなかったため京大の情報基礎対策の入門コンピュータ科学の参考書の勉強も土日と平日の空いた時間で進めていました。

印象としては入門コンピュータ科学の内容はそこまで難しくはないなという感じでした。

知らなかった内容もありましたが、会社でデータ構造とアルゴリズムや、プログラミングの事前知識はあったため、割とすんなり読めたように思えます。

試験8か月前

年明けぐらいから専門の勉強にも少しずつ着手していたように思います。

まずは機械学習関連の勉強をしていました。

はじめてのパターン認識などをざっと読んでみたりしていました。阪大院試対策の人工知能をやっていたので、少しは楽に読めたように感じます。

TOEICについてはこの時期から受け始めていました。2回受験して、885点を取ることができました。

試験半年前

研究室の先生に連絡を取り、研究室に見学に行きました。

このときあたりで志望先は京大の社会情報学に自分の中で決定していました。

社会情報学の2研究室とアポをとり、教授の話を伺いました。

入門コンピュータ科学の勉強は一通り終えて、引き続き専門の勉強をしていました。

試験4か月前

この辺りから過去問に着手し始めました。

京大のHPに過去問が公開されていたので、過去6年分が入手できました。

個人的な目標として過去問は3周したかったので、そのペースを目標にして勉強を進めました。

試験3か月前

院試の申し込み用資料の作成に着手していました。

面接用の資料作成が必要なため、できるだけ早めに内容を確認していました。面接用資料は友人に内容を確認してもらい、可能な限り修正を行い完成度を高めておきました。

上にも書きましたが、私の場合はすでに社会人だったので、大学生時代にやっていた研究の内容と、大学院生になってからやりたい研究について書きました。

また、研究室説明会にも京大現地まで行って参加しました。

試験まで

願書を提出した後はひたすら過去問をやっていました。土日はカフェなどに入り浸ってひたすら勉強していたというような状態でした。

過去問を見ていて今年もソフトウェア工学が出そうだと感じたので、追加でソフトウェア工学の教科書を勉強しておきました。

あとSutton本が入手できたので、それで強化学習の知識を補強しました。(結果的にですが、このSutton本がかなり役に立ちました。点数の底上げに確実に一役買ったと思います)

院試本番

院試直前や院試本番で考えていたことを書きます

事前情報

願書出願の締め切り後に受験者数が公表されました。

社会情報学を受験する人は89名とのことでした。募集要項には受け入れ人数46人と記載があったので、倍率は2倍近いとのことになりました。

正直、学生に時間で勝てる気はしていなかったので、30番台後半にぎりぎり入り込めればいいかなと考えていました。

また、募集要項を観ていると例年とは異なる点がいくつかありました。

特に大きな変更点は、専門科目の試験が午後ではなく午前に実施され、しかも試験時間が3時間から2時間になっていたことです。

いままでの過去問のノリでは全く時間が足りなくなるということが予想されました。

それに、先に配点の大きい専門科目になるので、「午前はダメだったけど、午後まだ逆転のチャンスがあるぞ!」という状況にはならないということです。

「午前は行けたから、午後は逃げ切りだな」という状況にいかに持っていけるかが、試験中のメンタルコントロールのカギになるのだろうなと感じていました。

そのため専門の勉強は結構力をいれていました。

院試1日目(2023/8/7)

試験開始前

10時開始だったので、昼食をコンビニで買ってから9時ごろ会場に行きました。その時点で人がすでに結構来ていたのですが、幸運なことに空いているベンチがあったので、そこに座って内容の復習をしました(院試が行われる棟の1階のベンチは目立つのですぐ人が座ってしまいます。2階の建築学科の教室寄りの方のベンチは死角に位置しているので意外と人が座っていません)

受験する部屋の外はとても暑く、汗を拭くタオルをもっていてよかったと思いました。

30分くらい前に教室が開場しました。教室に入ったらもう荷物を片付けるよう指示がありました。当日勉強したい場合はできるだけ早めに行くのが良いと思います。

 

試験(午前)開始

試験内容を観て軽く絶望しました。

例年6問中3問選択(2022年実施は5問中3問選択)するものがなんと今年は4問中3問選択という鬼畜仕様になっていました。

情報システムは基本的に捨てた方がいいという情報をネットで得ていたので、情報システムについての内容は全くみませんでした。そしてもうひとつの鬼畜ポイントはおそらく得点源になるであろうデータベースがなくなっていたことです。

この時点で機械学習、ソフトウェア工学、ヒューマンインタフェースで戦うことが確定しました。

ざっと内容を眺めた限り、まずソフトウェア工学が行けそうだったので、そこから手を付けました。

(1)「ウォーターフォールとアジャイル」これは頻出問題

(2)「テストについて」単体から運用で機能が増えていくのかなと勘で書きました。

(3)「フィーシビリティスタディ」feasibilityは実現可能性…システムが例外なく運用できることかなと勘で書きました。

しかし、あとから調べたら事業化可能性のことでした。院試で学生に事業化可能性についてなんか聞かないでよ。。。(私は社会人ですが)

(4)「ユースケース図」これも頻出問題

(5)「多重継承とポリモーフィズム」これは会社でオブジェクト指向を学んでいたので問題なし

 これを書ききった時点で40分経過。ペース配分としてはぎりぎり。

 

次に行けそうなのが機械学習・強化学習

(1)「用語説明」ほとんど過去問と同様、オフポリシーは過去問には出てなかったけど参考書で学習済みでした。

(2)「手書き数字認識」これは院試の学習とは別でやっていた機械学習の勉強が役に立ちました。pythonで手書き数字の認識の例題を参考書でやったことがあったので幸運なことに解答できました。

(3)「Q学習」Q学習はもちろん学習済みでしたが、まさか具体的な値が与えられるとは思ってもみませんでした。テンパっていたので、いったん保留しました。

(4)「機械学習と強化学習の使い分け」これは過去問で出題されたことのある問題なので解けました。

最後にヒューマンインタフェース

(1)「インタビューの方法」過去問で出た問題なので解けました。

(2)「インタフェース評価法」アンケート、ウェブアンケート、エスノグラフィー、ウォークスルーとかを書いた気がします。

 4つしか書けませんでした。今考えれば動画による観察とかかなぁと思います。

ここまで書き終わった時点で15~20分くらい残っていたように感じます。

最後に残しておいたQ学習に着手しました。

各エピソードの各ステップでQ(s, a)を更新していきます。過去更新したことのあるQかどうかを調べながら丁寧に進めていきました。残り時間的に何とかなりそうという心の余裕があったので何とか解けました。

残りの数分は必要項目の記載に間違いがないか、誤字が無いかを調べて終了しました。

初手で絶望しましたが、最終的にほとんどの問題に何らかの解答を書くことができ、空白で提出した問題はほぼなしという状況にまで持っていくことができました。

お昼

お昼は教室の外のベンチでサンドイッチを食べて、復習をしました。

休憩は1時間ありますが、問題用紙配布の時間があるので、あまり余裕はありません。

30分前くらいには席に戻っておくようにしました。

試験(午後)

情報学基礎は例年通り5問中3問選択でした。

情報学基礎はどの問題を選択するかで最終的な点数が大きく変わるだろうということは予想していたので、問題選びに時間をかけました。

問題1「マシン語」これは過去問でもやったことがあるので、解こうと思いましたが(2)がぱっと解答を思いつかなかったので保留

問題2「アルゴリズム」再帰とかは分かりますが、解答に時間を要しそうだったので保留

問題3「データ構造」これは分かるので解答確定

問題4「データベース」専門で出なかったデータベースがまさかのここで出題。これを解くのがよさそうだと感じました。

問題5「P,NPなど」説明系問題は満点解答を出せる自信がなかったのでこの問題は却下

ということでまずは問題3を解きました。仕事でプログラミングをしているので、ポインタの繋ぎ変えなどはお手の物です。

次に問題4に手を付けました。不運なことに(1)が分からなかったのですが、他は解けました。(データベースの勉強は出来上がったテーブルに対してSQL処理をするものばかりしており、テーブルをつくる命令は頭から抜けていました。。)

最初の問題なので(1)は間違えても減点は少ないだろうと踏み、総合点で高くなりそうな問題4を選択したということです。

最後は問題1に手を付けました。

他の問題をやっている途中で(2)の解き方を思いついていたので、そのまま解き進めました。

おそらく掛け算は、掛ける数の個数だけ足し算を繰り返して表現するのだろうと思います。

(1)が指定回数だけループを回す問題だったので、おそらく(1)が(2)へのヒントになっていた問題です。

どうでもいい事ですが、マシン言語を解答するときに長い直線を書く必要があり、定規が役に立ちました。

募集要項の机上に置いて良いものリストに定規があったので、必要ないとは思いつつ京大の素数ものさし(なぜか家に定規がこれしかなかった)を念のため用意しておいたのがまさかの功を奏したという結果になりました。

解答完了時はだいぶ時間が余っていましたので、すべて見直しにあてました。

院試2日目(2023/8/8)

2日目は面接になります。

1日目の試験結果で面接に進める人が決まります。当日9時20分ごろに掲示板に張り紙を見に行きました。自分の番号があることを確認して、面接の待合室に向かいました。

掲示板に掲載されていた番号は番号順でしたが、待合室で面接の順番が黒板に書きだされます。

詳しいことは分かりませんが、一説ではこれが成績順のようです。私は21番目でした。

10時から面接が開始され、順次受験者が面接部屋に向かいます。人数が多いからか、結構サクサク呼び出されていきました。

面接の内容は「研究の抱負を1分で説明せよ」でした。

私は緊張で頭真っ白になって、用意しておいたカンペを思いっきり見ながら声プルプルでしゃべりました。自分の研究の抱負くらいは暗唱できるようにしておくべきでした。今回の院試での一番の反省点かと思います。

面接が終わるともう院試は終了です。11時過ぎくらいだったかと思います。

あとは結果を待つだけなので、できることはありません。

帰りに四条河原町のエディオンでピクミン4を買って帰りました。

結果発表

合否発表(2023/8/18)

合否はインターネットにて15時に発表でした。

私は仕事中でしたのでこっそり会社パソコンで結果を調べ、受かっていることが分かってひとりでガッツポーズしてました。

この時点では配属先はまだわからないので、まだ気は抜けません。

配属先決定(2023/8/19)

郵送にて配属先についての資料が送られてきます。

うれしいことに第一志望の研究室に配属が決まりました。

点数開示(2023/9/初旬)

点数の開示要求をすることで、院試の点数を教えてもらえます。私の点数は

英語:150/150点

基礎:135/150点

専門:217/300点

面接:72/100点

でした。

TOEICは885点でしたが、これくらいで満点になるようです。基礎は9割取れたので満足としようと思います。

専門はもう少しインターフェースで点を稼げたかなという感じでした。あと、人工知能のところでももう少し記述を丁寧することもできたんじゃないかなと思います。

面接はカンペ読み声ぷるっぷるでしたがこれくらいの点は取れるみたいです。ネットの情報では6, 7割くらいが普通のようです。

感想・アドバイス

私が受けた院試の感想と、これから院試を受ける方へのアドバイスです。

一般的な話

参考書が大事

過去問ばかりではなく、参考書で院試の範囲全体を理解しておくことが大事だと思います。

それと参考書選びも重要になると思います。それぞれの教科の勉強法の章(別記事になりました)で教科書もご紹介します。

英語は高得点を取っておく

TOEICなどは早い段階から勉強して高得点を取っておくのが良いかと思います。そうしておけば安心して院試勉強に集中できます

計算機科学分野は解答に時間がかかる

おそらくですが、計算機科学分野の問題だけ解くのにめっちゃ時間が必要だと思います。

私が院試を受けたときは、隣の人がかなり早いタイミングでもう余裕ですみたいな空気を醸し出し始めたのでめちゃくちゃ焦りました。

おそらく分野によっては問題が早く解き終わることがありそうです。焦らず自分にペースで問題を解くことを心がけるのが良いと思います。

院試を受ける社会人・外部生の方へのアドバイス

そのような人が今後現れるかはわかりませんが、、

京大以外の外部から受験する方にも参考になるかもです。

できるだけ早めに動き出す

社会人は基本平日が空かないので、勉強できる時間が限られます。そのためできるだけ早い段階から勉強を始めて勉強時間を確保することが重要です。

プログラミングの実務経験で差をつける

職種にもよるかもしれませんが、プログラミングの実務経験があるとかなり楽に解ける問題も存在します。プログラミングはやっておいて損はないです

参考書は惜しまずに買う

社会人は内部生と違い授業資料などを手に入れるのが困難なので、基本勉強は参考書をもとにすることになります。必要な本は惜しまず買うのが良いと思います。

可能なら下見をしておく

京大は結構広いので試験会場がどこかは事前に見ておくのが良いと思います。

私は京大の電気電子工学科の出身のため試験会場は割となじみのある場所でした。それは結構アドバンテージだったかと思っています

※なんやかんや神頼みもする

神社でお祈りとかもしておくと良いと思います。私は安井金毘羅宮にひどいときは週3くらいで行ってました。

最後に

ここまでお読みいただきありがとうございました。

院試を受けるに際しての私の思ったことをできるだけ書かせていただきました。長くなったので各教科の勉強方法は別記事にしました。こちらも参考になればうれしいです。

これから院試を受ける人の参考になりましたら幸いです。

コメント

  1. 京都大学工学部 より:

    はじめまして、ブログを拝見させていただきました京都大学の他学科から社会情報学コースを受験しようと考えている者です。
    コメントするのが初めてで、内容と名前がブログに公開されるか不安だったので、詳しい内容はぼかして、ニックネームで失礼させていただきます。
    社会情報学コースへの合格おめでとうございます。合格までの出来事や考えていたことが詳しく丁寧に書かれており、私自身、院試までの様子を具体的にイメージすることができました。特に、「午前が勝負だな」という見立てはすごく参考になります。
    非公開であれば、もう少し詳しく私のお話を書かせていただけたらと思っております。社会人ということで大変お忙しい中とは思いますが、よろしくお願いいたします。
    大変、有益な情報をありがとうございました。

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